よく私は「人が好い」と言われる。あまり人を疑わないのだ。それが「人徳」だと言うことなのか。
人のものを掠め取るような人間は、その時は成功したように見えても、長い目で見ると、そのような人には人は付いていかない。

坂本龍馬は言っている。
〜金よりも大事なものに「評判」というものがある。世間で大仕事を成すのにこれほど大事なものはない。金なんぞは、評判のあるところに自然に集まってくるさ〜と。

評判とは、人について言えば「人徳」のことだろう。人徳のない人には人はついてはいかないし、そんな人は長い目で見ると決して成功はしないだろう。

しかし、「人が好い」だけではビジネスは成功しない。それは「人が好い」=人徳ではないからだ。
私が今まで68年生きてきて、もう人生の後半戦の半ばに近づいているのに成功とは程遠い人生を送っているのは、単なる人の好さだけであって、それを人さまは「人徳」と言ってくださっているのだろう。ほんまものの「人徳」ある人間にならなければいけないと切に思う。

稲盛和夫さんは中小企業経営者に「両極端の能力を持て」とお話しされる。

『京セラフイロソフイ』から

今、私は、大胆さと細心さ、温情と冷酷、合理性と人間性の両極端を併せ持ち、かつそれを場面に応じて使い分ける能力が必要だと言いました。これがいかに難しいことか、少しお話ししてみようと思います。

例えば、本田技研が成功したのは、スパナ一本、ハンマー一挺で、素晴らしいエンジンやオートバイをつくることができた本田宗一郎さんというものづくりの天才と、会社を経営するという面で、経理に明るく金勘定のできる藤沢武夫さんという名番頭の二人が揃っていたからです。
また同様に、松下電器は、あの松下幸之助さんと、これも名番頭と言われた高橋荒太郎さんの組み合わせがあり、ソニーの場合、技術者である井深大さんと、営業手腕に長けた盛田昭夫さんのコンビがあったから、それぞれ発展したと言われています。つまり、両極端の性質を一人の人間が持つことは難しいので、自分の不足を補う名参謀、名番頭が必要になるわけです。

ところが中小企業には、この例は当てはまりません。人材不足の中小企業で、そのような恰好な補佐役が簡単に見つかるはずがないからです。

ですから、中小企業では、トップである皆さんが相矛盾する両極端の能力を兼ね備え、かつ正常に機能させていかなければなりません。中小企業の経営者で大した才能があるわけでもないのに、そのような高いレベルの能力を要求される。しかし、泣いてでもそれをやらなければならないのです。私自身も、それができるようにこれまで頑張ってきたつもりです。

稲盛さんは、この両極端を併せ持った天才だ。しかし、私のような凡人はどうしたらいいのか。

人生の後半戦で、自らの不足分をカバーする努力はコスパを考えると無駄のように思われる。
それよりも自らの得手に磨きをかけることだ。物事の見方や考え方は、両極端を併せ持った発想を持つことが不可欠と思うが、私の能力の不足をカバーしてくれる名参謀、名番頭を探すことだろう。

そのためにも「素直な心」が何よりも大切だろうと思う。素直な心で、信頼がおける人たちのアドバイスを素直に聴く耳を持つことだ。

小林 博重