田原聡一朗さんの『90歳まで働く〜超長生き時代の理想の働き方〜』を読んだ。
田原さんは現在86歳だが、現役バリバリだ。90歳まで現役どころか「人生100歳現役」を地で行っていらっしゃる。彼の生き方は「仕事の最中に倒れ力尽きる」理想の姿であり、それは私が目指す理想の生き方=死に方でもある。

田原さんが理想とする働き方として”ドロップ・イン”思考を勧めていらっしゃる。
ドロップ・アウトは、本流から逸脱することであり、サラリーマンに例えれば、出世コースから外れて独立する人間のことだ。一方ドロップ・インとは、組織の中での自分の役割を全うしながら、別のジャンルでも活動して認められる人間だ。

今でこそ、日本の会社はドロップ・インの人間を認めるようにはなってきたようだが、それもお堅い業種ではなかなか難しいだろうし、例えそれが許されるとしてもそんな器用な人間はそうはいるものではない。 私なんぞ、銀行を辞めたのが今から24年前であり、お堅い業種の筆頭の銀行だったから、私の不器用な性格もあって、ドロップ・インの人生は考えようもなかった。

しかし、今の私は田原さんがいう”ドロップ・イン”の人生を送っているように思う。

その意味するところは、私は、今まで培った(温かい)人脈を縦横無尽に活かして、それに私の独特のキャラを加えることによって、曲がりなりにも人生の実質本流を歩いている(と自負している)ことにある。 決して、私の人生はドロップ・アウトの人生ではない。私の人生こそが”ドロップ・イン思考の人生”ではないかと思っている。

七転八倒の68年間の人生だったが、その経験をフルに活かしていることは、サラリーマンとして会社に半生を捧げた人間よりもより充実した人生であり、生涯現役で人生を全うできることは、21世紀の人生100年時代に相応しい生き方ではないかと思う。

田原さんの仰っていることの中で、私が一番心に刺さったことは「劣等感のおかげでやってこれた」ということだ。

田原さんは書いている。

これまでに200冊を超える本を出版しながら、私は「賞」と名のつくものをもらったことがただの1度もありません。どの本も、多くの人に読んでもらう価値はあると思っていますし、ベストセラーになった本も少なからずあります。 しかし、賞とはまったく縁がない。ですから、自分から「評価されている」などと口が裂けても言えません。
賞が欲しくて本を出すわけではないし、賞を狙って原稿を書いているわけでもありません。だから悔しいとは思いませんが、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」のが世の常だとすれば、200発撃って1発も当たらない実力は、私にとって劣等感と言うしかありません。 ただ、見方を変えると、何の受賞歴もないことは90歳まで働く上ではラッキーなのかもしれません。
(中略)
これまでは賞を取っていないから、私には背負わされるものもありませんでした。だから興味のある分野の仕事を自由に企画できたし、取材も好きなようにできました。そのおかげで、さまざまなテーマを、さまざまな切り口とスタイルで、200冊以上も本が書けたと思うのです。 劣等感があるから、私は自分の実力を過信することもありません。劣等感を克服しようと、人一倍努力もしてきたつもりです。
そして、劣等感を持ったまま、86歳まで現役で働いてきました。おそらく、90歳になっても、私の中から劣等感は消えないでしょう。だから90歳を過ぎても、まだまだ成長したいという意欲は失わずにいるに違いありません。

私も田原さんのお考えに同感する。私も劣等感の塊だからだ。

私ほど凸凹人間はいないと感じている。適性検査をしても、そのことは明確に出てくる。それは妻にもいつも言われることだ(お金儲けは下手だし、自己中の極みとも言われている。自分の好きなことしかしないからだ。家族を顧みないことは私も自覚している)。

ただ一つ、私には神さまからいただいた、私しか持っていないだろう「人の懐にふわっと飛び込むことができる」キャラクターがあり、人さまは私に対して全く警戒感を持つことはないだろうと言うことだ。 これは私の最大唯一の強みであり、それゆえに、私なりのたくさんの「温かい人脈」があるのだろう。
お人好しで今まで人に利用されたことは数知れず。しかし、これは最高の私の強みでもある。

あとは、私が持ち合わせていない、極めて多くの弱みを、信頼できる人たちの力を借りて補強し、凹んでいるところを埋めることだ。そして凸凹の私は、仲間たちのおかげで理想の球形になることができる。

そのためには、人を裏切らないことだ。真っ直ぐ生きることだ。まず、自分が信頼される人になることだ。そうすれば、もっと、どんどん、信頼できる高い志の人たちが私の周りに集まってくるだろう。

これからまだ32年の現役人生が私を待っている。
素晴らしい人生を全うするためにも、健康には一層、留意して生きていこうと思う。

小林 博重