株式会社浦建築研究所 代表取締役 浦 淳(うら じゅん)様

浦様

区別するわけじゃなくて多様性の一つとして留学生がいるっていうのを地域が作れたら面白いわけじゃないですか。

■御社の事業を簡単にご説明ください


創業が今年でだいたい61年目になりまして祖父の代からやっている石川県金沢市が本社の建築の設計事務所です。
私は2007年から社長をやっているので12年目になります。
本社以外に東京事務所を一昨年の秋(2年半くらい前)に開設をしまして、あとは中国の大連にも支社がありまして、そちらの方でも事業を行っております。

うちの会社の特徴は、建築設計において、いわゆる意匠設計だけでなく、それを支える構造設計、また最近の環境問題等でいうと、「デザイン的にはかっこいいのだが、夏は暑くて冬は寒いし、電気代も高い!」といった課題などに対処する設備設計のエキスパートを含め、様々な専門家が揃っているところです。

一般的に建築事務所は意匠設計だけやって、その他は外注というのが多いのですが、弊社は構造、設備も含めトータルでやって、バランスの良い建築を目指すというのが一つの理念です。

金沢、石川を中心に北陸にたくさん作品があります。どうしても北陸というのは雨雪が多いところなので結露の問題とかがあります。
私は大学を出てすぐに大林組という建設会社で現場監督をしていまして、関西の方で工場を作ったりしていたのですが、建物の作りがぜんぜん違うんですよね。
日本はすごく狭いのですが、金沢と関西では雨や雪などに対する対策が全く違ってくるんです。自然環境が厳しい中で設計をしているので、丁寧な設計ができるんじゃないかと思っております。

金沢は明治維新までは全国で4番目の都市規模があって、前田のお殿様がいた城下町なんですけど、戦災で焼けていないので自然が残っているんですね。そういう地域の中にものを創るというのは東京でものを創るのとはちょっと違っています。
東京はまず法律の範囲でめいいっぱいに建物を建てるというところからデザインを展開するのですが、金沢では敷地に余裕がある場合が多いので、その中で自然とか風土とか文化とかを読み解きながらものを創っていくという設計をずっとしてきました。
そういうものを逆に東京を含め全国で生かせないかというようなところもございまして、いま東京で展開しています。

また、中国で10年ほど前に建築家同士の交流があり、そこから始まって中国でも長く仕事を続けてきましたので、海外でも仕事が出来るのではないかと思ってます。
中国は一人っ子政策で非常に少子化が進んでいます。その子が田舎から都会の方にみんな出てくるので、当然そこで老人が一人で残ったり、その老人を都会の方に呼び寄せたりしたときに、なかなか一人で面倒を見きれないということで、今後老人ホームが流行るであろうという話になりました。それなら日本には既にそういった福祉施設があるのでそれを中国へ持っていけないかと思いました。

中国以外でも今回、ドイツで茶室を建てることになりました。
第2次世界大戦で焼失したベルリン宮殿を再建し、ヨーロッパで最大級の文化施設「フンボルトフォーラム」を建設するプロジェクトがあります。その中の東アジア美術館の日本展示フロアに設置されます。

■認定NPO法人趣都金澤の活動について


2004年頃、金沢青年会議所(金沢JC)で活動していた頃に仲間と一緒に「趣の都」(趣都金澤構想)という政策提言書を提案したのが発端です。
当時の政府が推進していた「ビジットジャパンキャンペーン」もあり、当初、金沢の主幹産業を「観光」にという提言を作ろうと考えたのですが、「観光」という言葉に違和感を感じたんですね。まちづくりをしっかりやっていくことが結果的に観光につながるんではないかと。それで、金沢の強みである「文化」でしっかりとしたまちづくりを行い、観光を含めた地域経済に落としていこうという提言を書いたんです。

2007年の秋に趣都金澤という団体が承認されましてNPO法人という形で、50名ほどの人数から始まりました。2018年現在260名ほど会員がいます。
もともとは10%くらいJCのメンバーだったのですが、今は1/4くらいで、1割位が大学の先生です。大学の先生は建築関係もいれば福祉、経済、観光などの先生もいらっしゃいます。

趣都金澤ですが、金沢の良さというのは文化と生活が近いところにあって、そこが京都との一番の違いなんですが、そういった金沢のいろんな素材を現代のリズムに置き換えて実現化出来ないかみたいな発想で様々な活動を行っています。
例えばお祭りなんかも昔に比べたら少なくなって昔ほど神社に人が集まらなくなっていて、「金澤宮遊(かなざわきゅうゆう)」というイベントでは、境内でアートパフォーマンスをすることによってもう一度コミュニティが再生できないかということに取り組みました。モダンダンスと地元の太鼓のパフォーマーが一緒にいろいろやったり、神社に映像を投影したり、そういった仕掛けで人を呼べないかと。

そのようなまちづくり事業を重ねる中からうまれたのが「金沢21世紀工芸祭」というイベントです。これはNPO法人趣都金沢が共催になっているのですが、文化庁からお金が出て、文化庁から金沢市が受けて、そこから委託ということで私どもの趣都金澤を中心に3つの団体が協力して企画運営を行っております。

料理人×食で、レストランや料亭を5,6店舗集めて、それと工芸作家をぶつける「趣都食彩」というイベントや、茶屋街の空き家とか店舗、貸しギャラリーなどを30店舗ほど借りて、一週間ほど古い町家に合う作品を展示する「工芸回廊」。また、非日常的な空間でお茶飲む「みらい茶会」という会もやってます。そういったいくつかのイベントをかけ合わせたものが工芸祭です。また、工芸祭ではありませんが、俳句の会などの座学の会もやったりしてます。

昨年、「NPO法人」から「認定NPO法人」になりました。
認定NPO法人は、NPO全体の2%ほどで、税制的に優遇され、寄付がしやすくなるのが特徴です。決算に透明性があるとか、人数がたくさんいるとかの条件があるのですが、昨年格上げしていただきました。

■企業の視点から留学生・日本人大学生の地方企業就職についてご意見をお聞かせください。


まず当社の場合ですが、中国の大連に事務所があることもあり、金沢大学大学院出身の子が一人います。非常に優秀なんですよ。

国籍にかかわらずこれからも採用していきたいです。
うちの会社は田舎にあるのにもかかわらず、県外出身者が多いんです。
ひとりモンゴルで生まれ育ったクォーター(日本人の血が1/4)の子もいますね。4カ国語ペラペラです。

うちみたいなのはかなりレアなケースで、設計事務所で地方から海外へ目を向けているところというのはなかなかないんですよね。ただ、他の企業で金沢はものづくり産業が結構有りまして、ベトナム・タイ・中国などに拠点を移しているところが多いので、そういうところで金沢の方に就職してくればいいですよね。
昔と違って今はインターネット等で買い物もできるし、「食」という分野では観光客がいっぱいお寿司とか食べに来たりしていますけど、そういう意味では物価も安いし、すごく住みやすいと思います。
僕らがパリに住むことを想像しにくいように、金沢に住むというイメージが外国人の方はなかなか出来ないんでしょうね。その住みやすさをアピールしていかなければいけないですね。

金沢の企業の方が、まだあまり留学生の存在に気がついていない。

金沢市は近郊に8大学あって、人口が45万人くらいでとても少ないのですが、人口に対する学生割合が京都についで2番目なんです。金沢大学は留学生を増やす指定校にも選ばれているので、そういう意味では留学生は結構います。
その留学生をこれからどうやってこの環境の中に引き込んでいくか。
就職という意味もそうなのですが、全く違う切り口からいうと、どういうふうな多様性を飲み込みながら街を作っていくかというのが地方都市にとってはとっても大事な事だと思います。
小さな町で、歴史もあり古い町並みも残っていて、伝統産業が強い。例えて言うなら色のついた小さな器が金沢。金沢がいい意味で都市的になっていくには、そこにどうやって多様性を盛り込んでいくかという事だと思います。
東京だと真っ白いキャンバスに自由なものを書けるんですけどね。
しかしながら、だからこそこの街の将来に楽しみがあり、ある指向を持った、例えば文化が好きだったり、あるいは一日一日の生活の満足度を高めたいとか、そういう感じの学生が増えてくれば少しずつ定着して人が増えていくかなって思うんですけどね。

■来年開催が予定されているOUEN塾in金沢/石川が果たす役割は?


小林さんから福岡の話も聞きましたが、会社説明会を留学生向けにしたりと、石川で留学生を雇ってくださいという仕掛けは県としても行っていますね。
僕がいいなと思ったのは、OUEN塾は留学生と日本の学生が一緒にワークショップをしたり聞いたりするという点です。要するに区別するわけじゃなくて多様性の一つとして留学生がいるっていうのを地域が作れたら面白いわけじゃないですか。
それの縮小版というか、一般の人と一緒の目線で、向こうも両方の目で見るし、こっちもお話しながらやれるっていう仕組みが一番面白いなと。

あとは企業側からの目線だけじゃなくて、学生目線でプログラムが全部作られているっていうのが今まで石川県でなかったところなので、非常に面白いなと。

– -小林団長
福岡県、福岡市、北九州市、石川県、金沢市も一生懸命やっているが、ターゲットが3年生なんですよね。
OUEN塾は1,2年生をターゲットにしている。
また、OUEN Japanと違って留学生特化でやっている。留学生は日本人の友達を作りたい、それで日本人から情報をもらいたい、っていうので、一緒になって企業にアプローチをしています。- –

■OUENJapanに応援メッセージをお願いします。


とにかく、日本全体というか地域も含めてやっぱり国際化していくっていうのがどうしようもない課題だと思うんですよね。
東京だけじゃなくて福岡とか金沢みたいな都市もそうなんですけど国際化していって、地域の若い人が海外に出ていってバリバリ仕事をしているっていう現実もそうですし、逆に優秀な人材を積極的に日本の方に受け入れていく必要もある。
日本は世界的に見ると特殊な環境だと思うんです。安全だし、美しいし、それから人が道徳的に素晴らしいものを持っていると思う。残念ながら、今のままでは経済の面では海外に負けていく可能性が高いと実は思っているのですが。
若い人がこれから海外で戦っていくにはもちろん、物理的には語学の習得とかもあるのですけど、それと同時に外国人の人たちと接する環境が早くからあったほうが、次の世代につながっていくと思うんです。

ぜひぜひOUEN Japanさんにそういう方々を増やしていっていただいて、東京都内だけじゃなく、福岡も大きい都市ですけど、金沢/石川みたいな特徴ある地方都市にも、その地域の生活に合う、そういう地域に憧れるような留学生にたくさん住んで仕事をしていただきたいなと思っております。