外資系金融運用会社 ヴァイス・プレジデント
小野塚 惠美(おのづか えみ)様

小野塚様

ここまでの活動って新しいことに挑戦をされてきたことは素晴らしいと思うので、OUEN Japanの活動自体に持続可能性をもたせる仕組みづくりを是非していただきたい。そこに期待しています。

■お仕事を教えてください。


私は、外資系金融機関の資産運用部門に属しています。
何をしているところかと言うと、個人、富裕層、あるいは年金など、いわゆるアセットオーナーと呼ばれる方々の資産を預かってそれを運用するという仕事です。
私はその中でも運用部門というところに属していて、実際に投資をした先の会社と対話をするのが仕事です。
今は企業の持続可能性というのがすごく問われる時代で、財務的にこの企業は収益を毎年生み出して、上場企業としてちゃんとやっていけるかなという部分と、社会とか地球とかに与える影響という意味での持続可能性というのがすごく大切になっています。
我々の投資先が日本国内で2000社くらいあります。その会社ができればみんな儲かって、且つみんなが地球と社会にいいことをしてくれると、そこの収益も我々の投資パフォーマンスも上がるので、我々としては皆さんに良いことをしてもらうということを主体に年間2000社の中から何社か絞って100社以上とお話をするという仕事をしています。
ちょっと難しく言うと、投資先の企業と目的を持った対話をして、企業価値向上に務める。
ひいては長期的な財務リターンの向上につなげると。こういう仕事をしております。

→ESG投資ということですね?

E 環境(Environment)
S 社会(Social)
G ガバナンス(Governance)
今までは、主に企業の売上とか、あるいはバランスシートとかを見て投資するのが一般的だったんですが、それに加えて環境へのインパクトや社会へのインパクト、実際にその企業がどういう内部統制で行われているのかというガバナンスを含めて投資を考えましょうというのがESG投資です。
私は対話という形でそれをやっていますけど、社内ではファンドマネージャーと呼ばれる専門家がそのESGを含んだ観点から、同じ業種の中でA社B社どっちを投資をするかというときにより財務成績に加えてESGの優れている方、あるいはリスクがより少ない方へ投資しましょうということをしています。これを全部含めてESG投資と呼んでいます。

■第一回のOUEN塾に参加された感想をお願いします。


まず企画自体が端的に素晴らしかった。
福岡にいる学生さんたちは必ずしも福岡の企業と密接に関わる機会がなかったんですよね。
あとはタイミング。1,2年生も対象に入れていたので、いざ就職活動!と考える前に地場にどんな企業があるのかを広く知っておける。あまり先入観のない時期にいろんな業種と触れ合えるという意味では、その場を提供されたというのは素晴らしいと思います。
そこでもっとこういう勉強を頑張ろうとか、こういうセクターを見ていこうという学生さんの方に主体性が生まれると思うので、あの早い時期に接点があるのは素晴らしいと思いました。
2日目の午後に実際に一緒に企業訪問をしました。学生さんがきちんと目的をもって参加していて、すごくたくさん質問をして、企業の方々もそれにちゃんと真摯に対応してくれていました。私は仕事柄対話というのをすごく大切にしているんですけど、キャチボールがすごくうまくいっていたように思いました。

→想像していたより学生さんの姿勢は積極的だった?

そう思います。
みんなまだ就職しなきゃとかいう切実なレベルではなく、ただ将来をどうしたいんだろうなというのを真剣に考えているステージだったので、ピュアな気持ちで企業や我々社会人の話を聞いてもらえた気がしました。
本質的に「仕事って何?」とか「これから2,30年社会人としてやっていくってどういうことなの?」「その中でどういった会社を選んだらいいの?」というベーシックなところで地に足がついた視点且つ積極的に前向きに話をしていました。

→企業側はどうでしたか?

企業側はもう切実ですよね。中央の企業も切実ですけど地方に行けばいくほど地域の学生さんでいい学生さんは勿論採用したいと思ってますし、そもそも採用競争が激しくなているので、そういう意味ではすごく真剣。
企業としても今までの就職活動あるいは採用活動とは違うというのがわかってきているのでいかに個人の価値観にアピールできるかを重視している様に思います。
例えば採用形態などもそうですが、地域で転勤がなくて活躍してくれる人の枠というのを総合職の中につくったり。
今まで企業側の発想は、総合職ってフルタイムで働いてくれて転勤もあって会社のいいようになる人材が長く活躍すれば終身雇用も昇進も望めますという、ひとつのプラットフォームしかなかった。
今は個人の価値観にあって、例えば女性だったらその地域でずっと働き続けて家族を持っても転勤がないけど、その中でもきちんと昇進をしていける。あるいは早くから小売業で店長経験をさせてもらってどんどん手に職をつける過程でアドバンスしてもらえるとか、または早くから海外プログラムを提供していて留学じゃなくてもOJT(実地トレーニング)的に海外に行けるとか、色んなタイプの職種を提供しているように感じました。

→留学生が日本で就職できない原因はなんだと思いますか?

日本が留学生も含めて外国人労働者を受け入れる素地がまだまだできていないと思います。
制度的な部分もまだまだ不十分ですし、土壌・カルチャー的にも難しいところがあります。
経産省がダイバーシティー検討会というのを開いていてそこで出したレポート読んだのですが、外国人の労働者の陥りがちな穴が2つあるみたいなんですね。

一つは外国人だからそれにあったような仕事ということで、いわゆる英語を使う仕事などにつかされて、必ずしもそれがその人のスキルアップにつながない。ピジョンホールされるというか。
逆に、みんなと溶け込んで仕事をしてほしいからということで、バックグラウンドとか興味の範囲が全く生かされないところに入れられてしまうケースです。そうするとそれはそれですごく違和感があって、もしかしたら言語というところが足かせになったりだとか、違う発想とかというのがちょっと蔑視されたりとかしてこっちも上手く機能しないというケースもあるそうです。
だからたぶんこの2つのモデルの融合した、もうすこし中和したパターン。本人のバックグラウンドとかスキルセットが十分に生かされて、且つそのダイバーシティの中でいろんな視点が重宝されるという中庸な文化や素地というのが会社側にないとなかなか難しいというのがあると思います。

日本企業全体っていう感じなんですかね。うまくやっている会社もあるとは思いますし、一概には言えないと思いますけど往々にして日本人はたぶん外国人の人が入ってきたら極端にどっちかにっていうことになっちゃうのかなと思います。
採用された本人にしてみれば、英語ができるんだから日本語と英語の翻訳とかをやる仕事につけてみたり、それはそれで即効性があるので会社としてはいいんですけど、それって別に語学人材として採用されたわけじゃないのに不本意だと思っちゃうところもあると思います。
それは帰国子女でも同じですよね。私も帰国子女なので英語ができるからって英語だけの仕事につかされたらそれはそれで嫌だったろうなと思いますけど、私はたまたま外資系の銀行に新卒から入って、その後転職しましたが、それはすごく重宝と言うか一つの強みとして見てもらえて、もっと違うところで私の強さとか能力を計られた気がするんですね。英語は英語でできるに越したことはないし、もちろんグローバルでのコミュニケーションはやってもらうけど、それはチーム全体の目標に合致するならどんどんやりなさいと。

でもより重宝されたのは、別の部分だったように思います。一番最初に入った銀行の管理部門で、日々日々やっている仕事のどこが改善できるか、改善ポイントを洗い出してそれをたとえば海外のオフィスと折衝して、こういうところをもっと効率化できるとか、こういうタイミングでやったほうが日本のお客さんのためになるからとやり方を変えてもらうということを会社として評価してくれました。
これって別に私が英語ができるかできないかってあんまり関係なくて、発想とかそういうところを会社が評価してくれたのだと思います。同じことを外国人の方が日本の企業に入ったときにできたら、それはそれですごくいい相乗効果が生まれそうですよね。

■OUEN塾というイベントが果たす役割はなんだと思いますか?


そもそも働くことってなんですか?っていう意識付けです。それは地方であろうが都心であろうが全然関係なくて、若い留学生も日本人学生も、働くこととか社会人としていい人生を送ることって何なんですかっていう、そういう大人としての情報をシェアすること。それは必ずしもこうしなさいという押し付けであってはいけないと思います。そこはすごく気をつけなきゃいけないですね。
私が社会人になった1998年からの20年間と、今の学生さんが世に出ていくこれからの20年間って全然社会の文脈が違うと思うんですよね。振り返れば失われた20年でしたけど、やっぱり過去の栄光の上に立っていた日本っていうのがこの期間はあったわけで、それなりにデフレだけど良い社会があったんですけど、ここから少子高齢化が進んで、しかも気候変動や、テクノロジーも凄まじいスピードで進化してますよね。
我々のオールドファッションな世代が正しいと思うことが、必ずしも価値観として訴求もしなければ当てはまらない場合もあるので、そういうことの伝授ということではなくて、これから社会人として働くということはどういう意味なのかを伝えていければと思います。
社会に出ていって人と接点を持つこと、世界と相対するとか、もう少し俯瞰的な見方をするとか。本当に普遍的なところをまずシェアすることが一番学生さんたちにとっては有益だと思います。変ななんとかメソッドみたいな押し付けじゃなくて、世の中を垣間見せて上げますよっていう、そういうスタンス。
あとは直接的な接点っていうのが特に地場の企業とはいいと思います。
やっぱりお互い知り合ってみないと、どんな若者がいま学生さんでいるのかが企業側もわからない。学生さんもどんな会社が地場にあるのかわからないので、その場を提供するっていう意味でその2つの点でOUEN塾の意義っていうのがすごくあると思うし、それができる団体というのもすごく少なくてユニークだし、付加価値がすごく高いと思います。

→何をやりなさいということではなくて、企業を見るときにこういう観点で見ていくとすごく光った企業が見つかるよっていうことを学生たちに伝えていくのもOUEN塾の一つの役割?

絶対そうだと思います。 人生の歩き方と、企業の見方。
第一回のOUEN塾でそのテーマについてお話させて頂きました。
自分にとっての価値観とか、家族との関係とか、なりたい姿っていう本質的なところから、これから100年生きていく中でどんなことを考えながら生きていったらいいのかとか、企業の中でも伸びる企業とそうでない企業を見極める必要がある。

例えばESG投資の観点だと、EV(電子自動車)化が進んで炭素税が導入されたら、たくさん炭素を発しているような車を製造している会社は将来コストが高まりますねとか、製造業で児童労働をやっているような会社は、短期的にはコストは低いからいいかも知れないけど社会からの制裁を受けるから将来コストが高いですねとか、こういう見方を学生さんに教えてあげるだけで、長期的に人生を共にしてもいい会社、それは終身雇用という意味ではなくて結果として長く働いていける会社を見つけるということがポイントになっていくと思います。

こういう軸を学生さんに持っていてもらうことで、どんなポイントを見ればいいか、企業が開示しているものとか、会社の経営者のビジョンとかを見て、本当にどういうビジネスを営もうとしているのかということをケーススタディとして行いました。

→技術が革新していって、どんどん陳腐化していく中でどうやって考えていくの?っていう点が学生さんに一番響いたんじゃないかなと思いました。

今あるマクロトレンドというのが、我々がこれまでの時代とは違うというのを認識させる大きなポイントなんですよね。
気候変動なんて、我々が初めてその気候の変動というのを直に感じて、且つなにかできる施策を打てる最後の世代と言われているんですね。初めてで最後。
そういうものはみんなでやることに意義があって、みんなで環境対策をしないと、一つの会社が良いことをやっても全然インパクトがないし、逆に一つの会社がものすごい悪いことをするとそれはそれでインパクトがあったりします。
そういうところにどう取り組むかという企業の姿勢とか、これまでのようにずっと人口が増加していくっていう、ベビーブーマーから高度経済成長期にあった、あの発想でいったらこれはまず企業として成り立たない。
産業構造の変化とか規制の変化というのも、中間層が無くなってリッチとプアの格差が広がっていくというような時代になっています。
あるいは都市化が急速に進む地域では、人や環境に与える変化として、渋滞、大気汚染、住宅供給難、スラム化などがあります。また、テクノロジーの進化という意味では100年に一度の変革が起こっているというところが、今までとは全く違うということを前提にしないと企業の戦略を見誤っちゃう危険性があります。
私達はCSRからESGへっていう話とよくします。
昔のCSR(corporate social responsibility)の時代、2000年代位から日本の会社でこのCSRのチームができ始めたんですね。それはなにかというと前提は倫理的に正しいことをするということが企業に求められたので、コンプライアンス・法令遵守とか、あるいは木を植える、ゴミを拾うという慈善事業みたいなことが企業としてすべき事だという考え方です。
これまでに化学業界であれば公害の問題とか、海外だったら会計汚職の問題とか、いろんな問題が出てきたことで、こういう事が必要とされていて、でもこの頃の当事者は企業だけだったんですね。
いまは時代が流れてESGの世界に変化したときに決定的に違うことが2つあります。
1つはこのままの経済活動を野放しにしておくと、地球社会もそれを前提とした企業の成長も持続可能じゃないっていう現状があります。地球社会が持続不可能かも知れないという危機感から倫理的にやってくださいという段階から、もう持続不可能だからやらなきゃだめだというところに来たんですね。
それは産業革命以降の気候変動の話もそうですし、あるいは人権的な話もそうですし、ゴミの話もそうです。
もう1つは、企業だけに任せておくと、暴走するということでやっぱり機関投資家という資本市場の監視というのを入れないといけないということでガバナンス強化の流れが出てきました。

この2つがESG時代と言われるここ10年位。日本でいうとこの3年~5年位の話なんですね。
企業に任せておくのは至極合理的なんですが、そこにはかならずチェックの機能が必要です。それをきちっとできるのが、本来であれば資本市場とか、他のステークホルダーと呼ばれる環境の活動家や、人権の活動家だったり、規制という意味で政府だったりします。
今日本で資本市場に携わる人たちがもっと頑張らないと、今まで企業は間接金融で銀行からバンバン融資を受けて成り立ってきて、別に無借金で起業できますという人たちも何故か銀行からお金を借りてくださいと言われて借りたり、上場して資金集めをする意味がないほどキャッシュを溜め込んでいるのに、一部上場だと採用がしやすいからという理由がメインで上場している企業もいます。
そういう人たちを詰めてこなかった投資家の責任っていうのもあるので、そこのところの企業内部でのガバナンスというのと外から見る目というのをきちっと機能させて行く必要があると思います。
日本は直接的にこのような投資家や、その人たちが選んだ外部の取締役員による監督の目をもっと強化しないと、本当に良くない世界になってしまうかなって。
最近聞く話のなかには、40代後半から50代あたりの人って、ある意味リーマンショックの前にいい思いをして、それなりに財を成した人達が、若者に「なんでもっと稼ごうと思わないんだ」みたいな話をするらしいんですよ。
稼いだらこんないい生活ができて、みたいな話なんですが、意外と訴求しないんです。今の若者が生きてきた20年間って、物質的な満足度っていうのはそれなりにあって、不自由を感じずに生きてきたんですね。むしろもうちょっと精神的な充足感とか、地球のこととか、社会の持続可能性みたいなことにどれだけ貢献できるかっていうのを大切にしている世代だから、そっちでアピールしないと、リーダーシップが本末転倒って言うことになるっていうことが私の目の前で起きています。
大人も変わらなきゃいけないし、自由選別で、選ばれなくなってから気づくのではもう手遅れになっている可能性が高いと思います。今変化できればいい時代になれる気がします。ただここで掛け違うと、貧しいんだけどユートピアみたいな国が出来上がっちゃう。たとえば日本の個人資産が1700兆とかあるのはほぼほぼピークに来ているので、ここから減る一方なんですよね。なので個々にある資産とかストックの部分をうまく活用して、次の100年150年をもっといい国にしていかないと、結構貧乏なこじんまりとした国になっちゃう気がします。
ここからの30年位って、すごいクリティカルなんですよ。そこにとって外国人であれ、日本人であれ、次の30年をガッチリ働いてくれる層っていうのを、ちゃんとこういう思想を共有しながらやっていくというのがすごく大切だと思います。

■OUENJapanに応援メッセージをお願いします。


ここまでの活動って新しいことに挑戦をされてきたことは素晴らしいと思うので、OUEN Japanの活動自体に持続可能性をもたせる仕組みづくりを是非していただきたい。そこに期待しています。
団長とその他キーとなる人とその他大勢みたいな活動であっちゃいけないですよね。OUEN Japanとしてのサステナビリティっていうことをぜひ考えてやっていただきたい。
また、引続き、学生ではアクセスのない世界、それは情報だったり、企業との接点だったり、あるいは別の世代との交流だったりっていうところのアクセスの提供を引き続きお願いできたら良いんじゃないかと。それに関して私にも協力できることがあれば、喜んで個人的に協力させていただきます。